夕暮れ
いつからだろう
頬をなでる風からは、いつの間にかぬるさが消えていた
一つの季節の終わりを告げるように、切なげな蝉の声が運ばれてくる
僕は、この風の匂いを知っている
それはまるで、ほんの少し前に嗅いだことのあるような匂い
草のような、大地のような、どこか切なさを感じる匂い
一年という歳月の間、鼻に届くことのなかった匂い
それなのに何故、これほどまでに近く感じるのか
それほどまでに、この季節の訪れを望んでいたのか
足元のコンクリートから立ち上る熱気が、名残惜しそうに夏を叫んでいる
後ろ髪を引かれるように、僕は静かに振り返る
足跡からは、かすかに向日葵の香りがするようだった
だいじょうぶ、きっとまた会えるよ
僕はつぶやき、前へ歩き出す
夕暮れ
風が吹く
辺りには、鈴虫の鳴き声が響き渡っていた
透き通る風の中、まるで僕らを、歓迎するかのように